R410
『海のガレージ・ボックス〜セカンド・ハウス』
敷地は、眼前に太平洋を望む南房総。一月から春の花が楽しめる温暖な気候で自然環境に恵まれた立地です。緑豊な山と雄大な太平洋に挟まれ、一年を通じて四季の移り変わりを身体で受け止めることのできるこの場所に、一人で車と向き合い、考え事が出来る空間と週末に家族の集える空間をつくろうとクライアントは考えました。
建物に求められたこと
1.所有している車の一台を安全に留めておけること。(ここを使用しない時も留めておく)
2.敷地・環境を十分に体感できること。
3.セカンドハウスとして寛げること。
4.時間の経過と共に、色々な使い勝手が考えられること。
5.考え方、使い方がシンプルであること。
6.構造体がコンクリートであること。
建物のポイント
全体概要
建物は「6×6×6(m)」のコンクリートのシンプルでコンパクト なスペースを持つ箱です。
箱の外皮(外部)は、厳しい自然環境と外部からの視線を程よく遮るため、開口部の向きや高さ、数を制限しています。
一方、建物の内部は、部屋と部屋を明確に区切る壁は無く、それぞれの視線が緩やかにつながり絡み合うにデザインされています。そして、室内のどの場所からでも「山の緑と雄大な太平洋」が望める仕掛けが施してあります。
室内に唯一ある仕切りも水廻りを集約した「高さ1.8m/厚み6mm」の鉄板の屏風の衝立があるだけです。ミニッキッチンと洗面器・便器が表裏で配置されており、これが浴室の目隠しとしても緩やかに機能しています。)
ロフトへの階段は、可動階段(軽量で丈夫な工事用仮設階段を使用)としてあり、階段の位置を変えることで、車を留めるスペースや人が溜まるスペースを自由にコントロールする事ができます。吹き抜けは、将来、既成のデッキプレートを使用しても耐力的に問題の無いスパ ンで穿たれており、手軽に床を増やせるように考慮してあります。
ローコスト手法とその恩恵
この敷地は、地元でも特に有名な大変潮風の厳しい地域にあり、塩害と砂混じりの強風対策には特に注意を払いました。
このような地域では、コンクリートの躯体の上に、別の仕上げを施すことによって、
コンクリートの構造体を保護する方法がとられがちですが、ここでは通常必要なコンク
リートの厚みの他に外部側に4センチの増し打ちをし、コンクリートの打ち放しの仕上げとしています。
こうする事で、コンクリート内部の鉄筋のサビ対策と共に、仕上げ手間を減らすことが出来、コストの削減も実現しました。
削減されたコストによって、塩害対策用のPコンを使用したり、コンクリート自身に防水効果をもたせる薬品を投入したり、外壁部分に十分な撥水保護材を塗ることが可能となり、一般的なコンクリート造の構造と比較しても、より強固なコンクリート造の建物として仕上がっています。
- 設計監理:
- 一級建築士事務所 岡松利彦アトリエ (担当 岡松利彦)
- 構造設計:
- 中村豊設計事務所
- 設 備:
- 一級建築士事務所 岡松アトリエ(担当 岡松利彦)
- 電 気:
- 一級建築士事務所 岡松アトリエ(担当 岡松利彦)
- 施 工:
- 渡辺建設株式会社
- 所在地 :
- 千葉県千倉町
- 敷地面積:
- 157.13㎡
- 建築面積:
- 47.66㎡
- 延床面積:
- 51.26㎡
- ガレージ面積:
- -
- 構造規模:
- 鉄筋コンクリート 1階+ロフト(2階)+屋上
- 設計期間:
- ‘03/05〜‘04/04
- 施工期間:
- ‘04/05〜‘04/08